浴衣に使われる生地の種類や特徴は?素材別の選び方も紹介
浴衣は平安時代に生まれ、江戸時代から夏場向けの外出着として使われるようになった伝統的な日本の着衣です。日本の高温多湿な夏に合った、涼しげな印象を与える浴衣は、夏を代表する和装と言えるでしょう。浴衣は主にカジュアルな場で着用されますが、浴衣素材や織り方によってはフォーマルな場に合った高級な印象を与えるものも存在します。
この記事では浴衣に使われる主な生地の種類について、素材と織り方それぞれの観点から特徴を解説します。浴衣の選び方について知りたい方はぜひご覧ください。
目次1
浴衣におすすめの生地の種類と選び方
浴衣とは、木綿や麻などの素材を使った夏向けの着物の一種です。もとは「湯帷子(ゆかたびら)」と呼ばれる、平安時代の貴族が蒸し風呂に入るときに着ていた着衣でした。現在のようにカジュアルな外出着となったのは、江戸時代中期以降です。
平安時代や江戸時代の浴衣は素材として主に木綿や麻、絹を使用しており、現在はポリエステルも使われています。素材によって浴衣の特徴や洗濯方法は異なるため、自分の好みや用途にあった生地を選ぶことが大切です。
木綿
木綿とはワタ属の植物から取れる糸を利用した植物性の繊維であり、コットンや綿とも呼ばれます。木綿の着物には以下のような特徴があります。
木綿の主な特徴 |
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木綿はこのような方におすすめ |
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木綿は化学繊維に比べると吸水性と通気性に優れており、吸収した汗を外に発散するので夏でも涼しく着られます。やわらかな素材のため、お子さんや肌が敏感な方にもおすすめです。
また、木綿は洗濯機で洗えるものが多く、クリーニングの手間もかからず簡単にお手入れできます。ただし、直射日光や紫外線に弱く当て続けると繊維を痛め、黄ばみを作ってしまうので注意しましょう。洗濯する際は、吸った水分を吸収して繊維が縮んでしわになりやすいため、濡れたまま放置せず、必ず伸ばして干すようにしましょう。
麻
麻は、さまざまな植物の繊維から作られた素材であり、リネン(亜麻)やヘンプ(大麻)、ラミー(苧麻・からむし)などの総称を指す言葉です。ただし、家庭用品品質表示法により、現在「麻」と表示される生地はリネンとラミーの2種と定められています。
出典:一般財団法人ボーケン品質評価機構「リネンとラミーの判別が可能となりました!」
麻には以下のような特徴があります。
麻の主な特徴 |
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麻はこのような方におすすめ |
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麻は通気性が高く、爽やかな着心地で夏も快適に過ごせます。また、吸熱性・撥水性に優れているため、汗をかいていても肌に浴衣がくっつきません。丈夫で、洗濯機で丸洗い可能な生地が多いこともメリットです。染色性にも優れており、カラフルで華やかな柄が多く販売されています。
ただし、摩擦や汗で浴衣の色がスリップや腰ひもに移ってしまうこともあります。また、直射日光に当てると色あせしやすいため、洗濯した際には陰干しで風を当てながら干しましょう。
ポリエステル
ポリエステルは石油から作られた化学繊維の1つで、多くの繊維製品に利用されています。ポリエステルの主な特徴は以下の通りです。
ポリエステルの主な特徴 |
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ポリエステルはこのような方におすすめ |
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ポリエステルは軽く、長時間浴衣を着る時にも体の負担がかかりません。また、速乾性があり、汗をかいたときにすぐに乾きます。
さらに、ポリエステルは耐久性に優れており、お手入れや管理もしやすい生地です。洗濯や着付けをしてもシワになりにくく、色落ちもしにくいため、扱いやすいでしょう。ポリエステルは発色がよく、色鮮やかで華やかな浴衣を作りたい方にも向いています。
ただし、ポリエステルは生地が滑りやすいので、着付けする時にコツがいります。普段の浴衣の着付けよりも、しっかりと腰ひもを締めることがポイントです。
絹(シルク)
絹とはカイコガの幼虫が吐く糸から作られた動物性繊維で、主に高級な衣料品に利用されます。絹には主に以下の特徴があります。
絹の主な特徴 |
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絹はこのような方におすすめ |
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絹は繊維の断面が三角形になっているため、光を当てるとプリズムのように反射し、美しい光沢がある生地です。繊維が細く、肌に吸い付くような触り心地をしています。
また、熱伝導率が低いので夏は涼しく過ごせます。素肌に優しく、肌が弱い方にも安心して着付けられるでしょう。絹を使った浴衣は高級な印象を与えるため、カジュアルだけでなく、フォーマルな場にも合わせられます。
ただし、絹はご自宅では手入れできないので管理に気を付けましょう。着た後は、まず家で陰干しをしながらしっかりと汗を飛ばすことをおすすめします。その後に、呉服店や和服専門のクリーニング店に持ち込みましょう。
浴衣の主な織り方の種類と特徴
浴衣は、素材だけでなく、織り方によっても浴衣の透け感や通気性、与える印象が変化します。素材と織り方、両方の特徴を把握することで、自分に合った浴衣を選びやすくなるでしょう。織り方の種類と特徴を紹介します。
絽
絽は、レース状になるように「からみ織り」という方法で織られた生地です。からみ織りとは、隣り合う縦糸をねじることで隙間を作っていく折り方です。縦糸をねじると糸が交差している部分ができ、横糸同士が密着できないため、隙間ができます。
絽の主な特徴は、以下の通りです。
絽の主な特徴 |
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絽はレース生地のように通気性に優れていて、夏でも涼しく着用できます。また、上品な透け感があり、セミフォーマルな場にもおすすめです。浴衣として着る際は、肌が透けてしまうため、多くの場合下にスリップを着用します。浴衣に絽が使われる場合、木綿やポリエステルが素材として主に使われます。
紅梅
紅梅(こうばい)とは、太い糸と細い糸を使い、表面が格子状の凸凹になった織り方の生地のことです。紅梅の浴衣には木綿を使った「綿紅梅」と、絹糸と木綿の両方を使った「絹紅梅」が存在します。紅梅には主に以下のような特徴があります。
紅梅の主な特徴 |
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紅梅の浴衣は凹凸があるため肌に張り付かず、さらっと着られます。また、上品な透け感があり、フォーマルな場でも着ていける高級感があります。浴衣の下に長襦袢を着て、夏用の着物として着る方も少なくありません。特に絹紅梅は浴衣と着物の中間とも言われ、カジュアル・フォーマル双方の場にも通用する浴衣です。
綿紬
綿紬(わたつむぎ)は先染めされた木綿糸で織られた生地で、紬のような節があります。綿紬の主な特徴は以下です。
綿紬の主な特徴 |
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綿紬は厚手の生地のため、単衣の着物に近い感覚で比較的涼しい時期から着用できます。
また、綿紬の一種には奥州木綿があり、独特な色味と風合いが魅力です。奥州紬・奥州小紋とも呼ばれていて、浴衣以外にも着物としても着られています。落ち着いた色合いの浴衣が多く、年齢を重ねても着ることが可能です。
縮
縮(ちぢみ)とは、収縮糸や強撚糸を使って折り上げた後に、湯に浸しながら生地を揉みこみ、縮ませて表面に凹凸をつけたものです。縮には麻や綿が使われることが多く、小千谷縮・明石縮・越後縮などさまざまなブランドがあります。縮の主な特徴は以下です。
縮の主な特徴 |
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縮は独特のしぼがあり、着心地が涼しいため夏場の着物や浴衣に向いた生地です。生地が丈夫でお手入れしやすく、アイロンがけの必要がありません。自宅で洗濯できる生地も多く、カジュアルな場に気軽に着ていきやすい点がメリットです。
コーマ地
コーマ地とは、通常のカード糸と呼ばれる糸から細かな繊維を除いて繊維を整え、なめらかな触り心地に仕上げたものです。コーマ地の主な特徴は以下です。
コーマ地の主な特徴 |
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コーマ糸は短い繊維を取り除いていくので、強度に優れ、美しいつやがある生地になります。また、肌触りも柔らかいため着心地が優れている点も特徴です。浴衣に使われるコーマ地には、主に綿や絹が使われています。
まとめ
浴衣は夏場に着用する着物のため、木綿や麻などの通気性や吸水性に優れた素材が記事に利用されます。また、耐久性・速乾性のあるポリエステルや、清涼感があり肌触りがよい絹も浴衣に使われる素材の1つです。
浴衣の生地は、絽や紅梅、縮などの透け感やしぼがあり、通気性の高い織り方が利用されます。また、肌触りの良いコーマ地や、厚手で涼しい時期から着用できる綿紬も人気の織り方です。織り方によって生地の印象も変わり、紅梅や絽の浴衣はセミフォーマルな場にも合った上品な印象を与えられます。