本返し縫い・半返し縫いの基礎知識と縫い方|きれいに仕上げるコツも
手縫いには多様な縫い方があり、中でも基本とされるのが「本返し縫い」です。手縫いの中では、もっとも丈夫に縫うことができ、手芸・裁縫を始める上で身につけておきたい縫い方です。
当記事では、手縫いの基本である本返し縫いとはどのような縫い方なのかという点にくわえて、バックステッチや半返し縫いといった縫い方との違いを解説します。本返し縫い・半返し縫いそれぞれのやり方や、きれいに仕上げるコツも紹介するため、裁縫初心者やハンドメイド作家として活動したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次1
本返し縫いとは?
本返し縫いとは、縫い目の間隔を空けずにミシン目のように仕上げる手縫い技法です。手縫いの中ではもっとも丈夫に仕上がる縫い方であり、小物作りやほつれの補修などで活用されています。
本返し縫いは「1針縫って1針分戻る」のが基本であり、表から見ると隙間なく針目が並んだ仕上がりとなります。厚めの布地を縫い合わせるときや、洗濯の頻度が高いアイテムを手作りする際には特におすすめです。
また、巾着型小物入れのように、頻繁に開け閉めする袋物アイテムのハンドメイドにも役立ちます。
本返し縫いとバックステッチの違い
本返し縫いと似た縫い方に「バックステッチ」があります。
バックステッチの縫い目は、本返し縫いと同じくミシン縫いのような見た目に仕上がるのが特徴です。また、縫い進める手順も本返し縫いとまったく同じです。
本返し縫いとバックステッチの違いは、それぞれの役割にあります。本返し縫いは生地を縫い合わせることを目的としているのに対し、バックステッチは糸で刺繍することを目的としています。
縫い始めと縫い終わりの糸処理も違いの1つです。本返し縫いは基本的に玉結び・玉止めで処理しますが、バックステッチでは刺繍専用の糸端処理が施されるのが特徴です。
本返し縫いとバックステッチは同じ縫い方ですが、利用シーンによって呼び方が変わることを押さえておきましょう。
本返し縫いと半返し縫いの違い
本返し縫いと似た縫い方に「半返し縫い」があります。半返し縫いは、針を半分返しながら縫う技法であり、表側から見ると並縫いのような仕上がりになるのが特徴です。
本返し縫いと半返し縫いは、どちらも糸を重ねながら縫い進めるという点では共通しています。しかし、本返し縫いは1針縫って1針分戻るのに対し、半返し縫いは1針縫って半針分戻るため、本返し縫いのように縫い目がつながらないという違いがあります。
両者はどちらも強度が高い縫い方である点がメリットです。本返し縫いは、糸が重なる部分が多いため、半返し縫いよりもさらに丈夫に仕上げることが可能です。
本返し縫いは、厚手の生地をしっかり合わせたい場合に向いています。半返し縫いは、糸の重なりが少なく縫い目が柔らかくなるため、薄い生地や伸縮性のある生地を丈夫に縫い合わせるレシピに最適です。
手縫いの縫い方には本返し縫いや半返し縫い以外にもさまざまな技法があり、用途や作品の種類によって適切な縫い方が異なります。基本的な縫い方を一通り押さえておけば、生地や用途に合わせて使い分けができるでしょう。
本返し縫いのやり方
本返し縫いのやり方・手順は、以下の通りです。
手順(1)針に糸を通して玉結びする
本返し縫いに使う糸を選んだら、針に通して玉結びします。糸は1本取り・2本取りのどちらでもかまいません。
手順(2)布の裏側から針を刺す
布の裏側から針を通します。次の手順で1針分戻ることになるため、縫い始めより1針分先に針を刺しましょう。結び目が留まるまで、糸をすべて表側に引き抜きます。
手順(3)縫う方向の反対側に針を刺す
手順(2)で針を刺した場所から1針分戻って針を刺し、裏側に引き抜きます。ここで針を刺した箇所が縫い目のスタートとなることを押さえておきましょう。
手順(4)裏側から縫う方向に1針分進めて針を出す
裏側から1針分進めて針を刺し、表側に引き抜きます。この時点では手順(2)で刺した針目を跨いだ状態となっています。
手順(5)手前の縫い目に針を戻して刺す
1針分戻って手前の縫い目のすぐ隣に針を刺し、縫い目をつなげるように縫いましょう。
手順(6)同じ要領で縫い進める
さらに裏側から1針分進めて針を出します。同じ要領で作業を繰り返します。
手順(7)布の裏側で玉止めする
すべて縫い終えたら布の裏側に針を出し、玉止めしたら完成です。
本返し縫いをきれいに仕上げるためのコツ
本返し縫いをきれいに仕上げるには、いくつかのポイントがあります。本返し縫いは表側からも縫い目が見えるため、コツを押さえて縫い進めれば仕上がりのクオリティをアップさせることが可能です。
ここでは、本返し縫いをきれいに仕上げるコツについて詳しく解説します。
縫い目の隙間を空けないようにする
本返し縫いは、ミシン縫いのような仕上がりとなり、縫い目がつながっているように隙間なく並ぶのが特徴です。また、裏面は糸が重なって一直線になります。
縫い目と縫い目の間に隙間があると見た目のクオリティが下がってしまうため、隙間ができないように縫い進めるのが重要です。針を戻す際は、手前の針穴のすぐ隣に刺すと隙間なく縫うことが可能です。
隙間を空けずに縫えば、表側はもちろん裏側の縫い目も美しく重なります。
チャコペンを使って針の刺す位置を揃える
針目の高さが揃っていないと、縫い目がガタガタになってしまいます。針を刺す位置・高さをまっすぐに揃えられるよう意識しましょう。
裁縫が得意でない場合には、あらかじめチャコペンを使ってガイドラインを引いておくと安心です。
糸の引き加減を均一にする
針を刺した後に糸を力強く引っ張りすぎると、布が縮んでギャザーができてしまいます。本返し縫いは強度が高いため、1度ギャザーができると解消するのが難しくなります。縫い目をしごいても元に戻らない可能性が高いでしょう。
糸を引っ張りすぎて布が縮まないよう、糸を引く加減が均一になるよう意識しながら縫い進めるのがおすすめです。
半返し縫いのやり方
本返し縫いのやり方をマスターすれば、半返し縫いも簡単にできます。半返し縫いのやり方・手順は以下の通りです。
手順(1)布の裏側から針を刺す
針に糸を通して玉結びしたら、布の裏側から針を通します。次の手順で半針分戻ることになるため、縫い始めより半針分先に針を刺しましょう。結び目が止まるまで、糸をすべて表側に引き抜きます。
手順(2)縫う方向の反対側に針を刺す
手順(1)で針を刺した場所から半針分戻って針を刺し、裏側に引き抜きます。
手順(3)裏側から縫う方向に1針分進めて針を出す
裏側から1針分進めて針を刺し、表側に引き抜きましょう。
手順(4)手前の縫い目に針を戻して刺す
さらに半針分戻って針を刺し、裏側から1針分先に針を刺します。表側から見たときに、並縫いのような見た目となることを押さえておきましょう。同じ要領で作業を繰り返します。
手順(5)布の裏側で玉止めする
すべて縫い終えたら布の裏側に針を出し、玉止めしたら完成です。
半返し縫いをきれいに仕上げるためのコツ
半返し縫いをきれいに仕上げるためのコツは、以下の通りです。
- まっすぐ縫う
- 縫い目の大きさを調整する
- 生地にあった針と糸を選ぶ
半返し縫いは、並縫いのようなステッチが表面に出るため、まっすぐ揃った美しい縫い目を意識することで見た目のクオリティが上がります。裁縫初心者は、チャコペンを利用してあらかじめガイドラインを書きましょう。
また、半返し縫いは縫い目の大きさによって、見た目・強度が大きく変わります。作品に合わせて縫い目の大きさを調整することが重要です。
薄く柔らかい生地を使用する場合は、生地がよれるのを防ぐために細い針と糸を使用するのがおすすめです。
まとめ
本返し縫いとは、ミシン目のように縫い目の間隔を空けずに仕上げる手縫い技法を指します。手縫いの中でも、丈夫な仕上がりになる点が大きな特徴です。半返し縫いは、針を半分返しながら縫う技法で、表側は波縫いのような仕上がりになります。
どちらも比較的強度が高い縫い方ですが、厚手の生地をしっかり合わせたい場合や、丈夫に仕上げたい場合におすすめの技法です。半返し縫いは、薄い生地や伸縮性のある生地を丈夫に縫い合わせたい場合に向いています。
頻繁に洗濯するアイテムや負荷がかかるバッグなどを作る際は、ぜひ本返し縫いにチャレンジしてみてください。