フリース素材の特徴とは?|歴史やその他の合成繊維も紹介
フリースは寒い季節に大活躍する素材です。毎年、たくさんのブランドがフリース生地を使った魅力的なデザインのウェアを出しているため、愛用している人も多いでしょう。とは言え、身近な素材のわりに、フリースがどのような特徴を持つ生地なのかよく知らない人も多いのではないでしょうか。
そこで、当記事ではフリースの概要や歴史、特徴や洗濯時の注意点、フリースの原料でもあるポリエステルの特徴からほかの代表的な合成繊維まで解説します。ハンドメイド作品を作る際や衣服の知識を深めたい人は、ぜひ参考にしてください。
目次1
フリースとは?
フリースとは、ポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した織物に、起毛仕上げを施した繊維素材のことです。本来は「刈り取ったひとつなぎの羊毛」を意味する言葉(fleece)ですが、現在フリースというとポリエステル繊維の素材を指すことが一般的です。
フリースは、非常に暖かく、軽量で羊毛のような柔らかさがあります。フリースの原料となるポリエステルは、熱に強いことから製造時にさまざまな特殊加工がしやすく、撥水性や保温性、速乾性などの機能性の後付け加工が可能な素材です。アクリルで作られた安価なフリースもありますが、アクリル製はやや強度が弱く、機能性の後付け加工に向いていない素材となります。
また、フリース素材は安価で、切りっぱなしでも端がほつれにくいため、ハンドメイド初心者にもおすすめの生地です。ぬいぐるみや赤ちゃん・ペット用の防寒着などにも適していますが、手持ちのものをリメイクして暖かさや肌触りを高めた作品を作ることもよいでしょう。たとえば、手持ちのブランケットとフリース素材を重ねて広げ、周りをぐるっと縫い付けるだけで、ふわふわの暖かなブランケットを簡単に作ることもできます。
フリースはどんなアイテムに使用されている?
軽くて暖かいフリースは、冬場に活躍することが多い定番素材です。街で見かけることが多いアイテムとしては、フリースジャケットやフリースパーカーなどがあげられるでしょう。保温性の高さから、帽子や手袋、マフラーなどの防寒用品にもよく使われています。また、肌触りもよいため、フリース製のパジャマやパンツ、インナーなども人気のアイテムです。
衣類だけでなく、ブランケットやひざ掛けなどにもよく使われています。毛足の長いタイプのほうが身体から出る熱を逃がさないため、より暖かさを感じることができます。
また、通気性がよく汗をかいてもすぐに発散する性質があり、耐久性も高いことから、スポーツウェアやアウトドアウェアにも適しています。
フリースの歴史
フリースの原型は、1977年までさかのぼります。当時、アウトドアブランド・メーカーのパタゴニアを創設したイヴァン・シュイナードは、登山用のウェアに適した素材を探していました。求めたのは、ウール並みの保温力と耐久性を持ち、速乾性も兼ね備えた素材です。
モールデンミルズ社(現ポーラテック社)が便座カバー用に卸していたポリエステル素材の生地に出会ったイヴァンは、それでセーターを作ります。保温性にも速乾性にも優れた、フリースウェアの原型と言えるセーターでした。
1985年には、イヴァンはモールデンミルズ社と提携して新素材「シンチラフリース」を共同開発します。シンチラフリースは瞬く間に人気となり、多くのアウトドアメーカーが採用するようになりました。以降、フリースは改良が重ねられ、現在ではカジュアルなファッションに欠かせない素材となっています。
フリースの主な特徴・魅力
アウトドアウェアやスポーツウェアだけでなく、普段着やルームウェアの素材としても愛されるフリースには、さまざまな魅力があります。どのような特徴や魅力があるのか見ていきましょう。
フリースの主な特徴・魅力
- 保温性が高くとても暖かい
- 速乾性がある
- 強度が高く軽い
- 柔らかく触り心地がよい
フリースは生地の表面に起毛処理が施されており、毛羽だった繊維と繊維の間に空気が含まれています。起毛生地は繊維間の空気の層によって内部の熱が逃げづらく、冷えた外気も遮断するため、暖かな状態が続きます。
また通気性に優れ、濡れてもすぐに乾く性質があります。雨や雪で濡れてもすぐに乾き、乾いた汗がすみやかに発散されるため、蒸れやべたつきが続きません。洗濯した後もすぐに乾きます。
柔らかい繊維を織り込んだ上で起毛処理も施しているので、肌触りがよくふわふわしていることも特徴の1つです。
洗濯時の注意点は?
基本的に、フリース製品は自宅での洗濯が可能です。とはいえ、適当な洗い方をすると毛玉ができたりごわついたりする可能性があるため、洗う際は以下のポイントに注意し、生地への負担を減らしましょう。
- 洗濯ネットに入れる
- おしゃれ着用洗剤で洗い、柔軟剤を使用する
- 洗濯機の「手洗いコース」や「ドライコース」を選ぶ
- 脱水時間は短めにする
ほかの衣類と絡んだり擦れたりしないように、洗濯の際は洗濯ネットに入れましょう。毛玉の発生を抑えることもできます。丁度よい大きさの洗濯ネットを選び、ボタンやファスナーをきちんとしめてたたんでから入れることも大切です。
洗剤は、一般の洗濯洗剤と比べ生地の負担が少ない、おしゃれ着用中性洗剤を選びましょう。静電気の発生を防止する効果もあります。フリースのふわふわの風合いを維持するため、柔軟剤を入れるのもおすすめです。
洗濯機のコースは「手洗い」や「ドライ」を選びます。通常のコースよりも水量や水流が調節されるため、生地への負担が少ない洗い方です。洗濯が終わったらすぐに取り出し、型崩れしないよう形を整えて風通しのよい場所で陰干ししましょう。
ポリエステル以外の代表的な合成繊維
フリースの原料はポリエチレンテレフタレート(ポリエステル繊維の一種)で、合成繊維に分類されます。合成繊維は化学繊維の一種で、石油などから化学的プロセスを経て合成されたものです。人造繊維と呼ばれることもあります。
合成繊維は綿や麻、羊毛などの天然繊維と比べ、強度や耐水性、耐薬品性などに優れていることが特徴です。多くの種類がありますが、一般衣料では特にポリエステル・アクリル・ポリウレタン・ナイロンの4つが多く使われています。
アクリル
ポリエステル・ナイロンと並ぶ「3大合成繊維」の1つで、この3つの繊維が合成繊維の中でも圧倒的な生産量を誇ります。アクリロニトリルと呼ばれる石油が原料です。
以下のような特徴があります。
- 風合いがふっくらとしている
- 保温性に優れている
- 虫やカビに強い
- 弾性回復力が強く、シワや型崩れが起きにくい
アクリル素材のふっくらとした風合いは天然繊維のウールによく似ていて、セーターやニットなどに使われることが多いです。空気を保つ構造で暖かい点も、冬物衣料によく適しています。天然繊維とは異なり、虫食いやカビの心配がなく、丈夫で長持ちしやすい点も魅力の1つと言えるでしょう。
ポリウレタン
ポリウレタンは伸縮性を持つ柔らかい合成繊維で、スパンデックスとも呼ばれています。以下のような特徴があります。
- 伸縮性が高い
- 軽量
- 単体で使われることは少なく、混紡されることが多い
- シワができにくい
もっとも大きな特徴は、優れた伸縮性があることです。もともと、天然ゴムの代替品として開発された経緯があり、よく伸び縮みします。元に戻りやすいため伸びっぱなしになることもなく、シワにもなりづらい点も魅力の1つです。
ポリウレタン単独で使われることはあまりありません。綿やウール、ポリエステルなどほかの素材と混ぜて使われることが一般的です。ポリウレタンは軽量なため、混紡することで衣類を軽くできる利点もあります。ストレッチ性の高さや軽さから、スポーツウェアによく使われる素材になります。
ナイロン
ナイロンは、1938年に工業化された古い歴史を持つ合成繊維です。衣料用の繊維としては、「ナイロン6」と「ナイロン66」の2種類がよく知られています。ただし、この2つに大きな違いはありません。
ナイロンには、以下のような特徴があります。
- 非常に軽い
- 摩擦に強い
- 弾力性に優れ、シワになりにくい
- 乾くのが早い
- 虫やカビに強い
ナイロンは数多くの種類がある繊維の中でも、トップクラスに軽いです。摩擦に強く虫害などの恐れもないため、耐久性にも優れています。
軽量・弾力性がある・摩擦に強いといった特徴から、スポーツウェアやアウター、レイングッズなどに向いている素材です。そのほか、ストッキングやバッグなどの小物類、カーテン、釣り糸など生活のあらゆるシーンで使われています。
まとめ
フリースは、ポリエステル繊維から作られた素材です。起毛加工が施されており、軽くて暖かく、触り心地がよいことが主な特徴です。通気性が高く速乾性があるため、濡れてもすぐに乾きます。安価なこともあり、部屋着からアウターウェアまで多様なアイテムに使われています。
多くの魅力があるフリースですが、洗濯の際は注意が必要です。そのまま洗うと毛玉ができたり表面がごわついたりすることがあります。洗うときは洗濯ネットに入れ、手洗いコースで洗うようにしましょう。
フリース素材は切りっぱなしにしても端がほつれてこないため、ハンドメイド初心者にも取り入れやすい素材です。ユザワヤなどの大手手芸店のオンラインショップには、数多くの生地や手芸用品がそろっているため、フリース素材探しに利用するのもよいでしょう。