テンセル生地とは?素材の特徴やおすすめの用途・お手入れ方法を解説
植物繊維を化学処理した再生繊維は、ドレープ感にすぐれた上品な印象を与える生地が多く、ハンドメイドでもさまざまな用途に利用されています。中でも、再生繊維の1つであるテンセル(リヨセル)生地は、地球環境に配慮されたサステナビリティの高い繊維として注目されています。
この記事ではテンセル生地の特徴や、ハンドメイドで素材として使うときのメリット・デメリット、おすすめの用途やお手入れの方法を解説します。ハンドメイドで生地選びに迷っている方はぜひご覧ください。
目次1
テンセル生地とはどのような素材?
テンセル生地は、ユーカリからつくられた植物由来の再生繊維です。ユーカリ原料の木材パルプを化学処理によって溶かし、フィルターでろ過した後、細長いノズルから押し出すことで繊維がつくられます。
テンセルは素材の総称ではなく、レンチング社というオーストリアの繊維メーカーの登録商標です。
出典:Lenzing Aktiengesellschaft「テンセル™の紹介」
同じく植物繊維を化学処理した再生繊維には、レーヨンやキュプラがあります。
テンセル生地の主な特徴
テンセル生地は、地球にやさしい繊維であることが特徴です。ユーカリノキは、成長が早く化学肥料を使用しなくても丈夫に育ち、植林に適した植物です。テンセル生地の原料は、ユーカリノキを計画植林したサステナビリティの高い森林から供給されています。
再生繊維を作るための木材パルプ用の溶剤は、工程用水のリサイクルによって、99%の再利用が可能です。また、テンセル生地は生分解性があり、自然の中に置かれた場合は土にかえります。
テンセル生地の環境配慮は国際的にも認められており、EUエコラベルや、欧州環境賞の「持続可能な開発のためのテクノロジー」賞を受賞しています。
テンセルとリヨセルの違い
テンセル生地は「リヨセル」とも呼ばれていますが、実は両者に違いはなく、同じ繊維のことを指しています。
元々「テンセル」はイギリスのコートルズ社の商標名であり、「リヨセル」はオーストリアのレンチング社の商標名でした。しかし、2004年に両社が合併したことにより、レンチング社のリヨセル繊維は、すべて「テンセル」の商標に一本化されました。現在、一般名称としてリヨセルと呼ばれている繊維の商標名がテンセルです。
テンセル生地のメリットとデメリット
テンセル生地は、環境にやさしいだけでなく多くのメリットがあることから、アパレルや家庭用品などの幅広い製品に使われています。一方で、テンセルを素材として利用する際にはいくつか注意すべきポイントがあります。
テンセル生地のメリットとデメリットを事前に把握しておけば、ハンドメイドの際の生地選びや作品づくりに役立られるでしょう。
メリット
テンセル生地のメリットは、以下の通りです。
【テンセル生地のメリット】
柔軟性が高い |
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テンセル生地は、繊維が細かいため柔軟性が高いです。伸縮性があってフィット感にすぐれており、スポーツウェアや下着にも使われています。締め付け感がないので、長時間身につけていても不快感がありません。 |
滑らかで柔らかな肌触り |
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テンセル生地は繊維が細かく、表面が滑らかで肌触りが柔らかい特徴があります。レンチング社は自社調査で、テンセル生地の柔らかさはコットン生地の2倍で、洗濯や乾燥を繰り返しても柔らかさが保たれると発表しています。そのため、敏感肌の人でもストレスなく身につけられます。 |
通気性にすぐれている |
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テンセル生地の細かな繊維は、水分の吸収と放出を調整する機能を持っています。通気性がよく、乾きやすいので、汗をかいても快適に過ごせます。 |
高級感がある |
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テンセル生地は、繊細で滑らかな質感で、見た目にも高級感があります。上品な光沢があり、ドレープがきれいに出るので、ワンピースなどの衣服に最適です。上質感のあるアイテムを作りたいときは、テンセル生地がおすすめです。 |
デメリット
多くのメリットがあるテンセル生地ですが、以下のようなデメリットもあります。
【テンセル生地のデメリット】
摩擦に弱い |
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テンセルは、とても繊細な素材のため、摩擦に弱いデメリットがあります。摩擦によって、全体または部分的に白っぽくなる「白化」も起こりやすいです。 長持ちさせたいなら、洗濯方法や取り扱いに気をつけましょう。また、テンセル100%ではなく、丈夫な繊維と混紡した生地を選ぶことで傷みにくくなります。 |
シワになりやすい |
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テンセル生地は伸縮性がある一方で、シワになりやすいです。洗濯するときは、長時間の脱水は避け、しっかりシワを伸ばしてから干しましょう。 |
虫食い・カビが発生しやすい |
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テンセルは木材を原料とする繊維のため、虫食いやカビが発生しやすいです。濡れたまま長時間放置したり、湿度の高い場所に置いたりするのは避けましょう。虫食いやカビを防げるように、通気性のよい場所に保管することが大切です。 |
テンセル生地のおすすめの用途
テンセル生地はハンドメイドを行うときにもおすすめの生地です。テンセルのメリットを生かして、主に以下のような作品に利用されています。
・ワンピース
テンセルは上品な落ち感と光沢感がある素材のため、ワンピースに適しています。上質な素材をふんだんに使ったワンピースは、着心地のよさも抜群です。
・ブラウス
テンセルのブラウスは通気性がよく、見た目にも涼しげな印象を与えます。上品なテンセルのブラウスは、カジュアルはもちろん、きれいめ系のスタイルにも合います。
・ストール
テンセルは肌触りがよく、ストールやスカーフ、ネックウォーマーなどの素材としても人気です。高級感のある素材のため、シンプルなアイテムでも品よく仕上がります。
・バッグ
テンセル生地の風合いを生かして、トートバッグなどを作るのもおすすめです。柔らかくて身体に沿うような質感は、テンセル生地ならではの特長と言えます。
・寝具
滑らかでソフトな触り心地のテンセル素材は、寝具にもよく使われています。通気性もよく速乾性があるため、寝具に合った素材です。
テンセル生地のお手入れの方法
テンセルは魅力にあふれた素材ですが、デリケートであり、丁寧に扱う必要があります。テンセル生地を長持ちさせるための、お手入れのポイントは以下の通りです。
・洗濯のときは30度以下のぬるま湯を使う
テンセルは繊細な素材なので、熱いお湯を使うと生地が傷んでしまいます。洗濯のときは、30度以下のぬるま湯を使いましょう。おしゃれ着洗剤を使って、やさしく押し洗いするのがおすすめです。
・裏返して畳む
摩擦が起きると、テンセル生地は白化することがあります。洗濯のときは裏返して畳めば、着用する面の摩擦ダメージを軽減できます。
・こすり洗いを避ける
テンセル生地は摩擦に弱いので、こすり洗いは避けましょう。こすり洗いをすると、その部分だけ白っぽくなってしまう可能性があります。汚れを水に溶かすようにして、やさしく押し洗いするとよいでしょう。
・脱水は短めにする
脱水時間が長すぎると、テンセル生地はシワだらけになってしまいます。畳んだままタオルではさみ、軽く押さえるようにして脱水するのがおすすめです。洗濯機で脱水するときは、洗濯ネットに入れて20〜30秒程度に設定しましょう。
・乾燥機を使って乾かさない
テンセル生地を乾燥させる際に、乾燥機を使うのは厳禁です。伸縮性が高く繊細なテンセル生地は、乾燥機を使うと生地を傷めやすく、縮んでしまう恐れがあります。ボトムスは吊り干しに、型崩れしやすいものは平干しにして、風通しのよい日陰で乾燥させましょう。
・アイロンがけのときには当て布を使う
テンセル生地はアイロンがけができる素材です。当て布をした上で、中温にしたスチームアイロンを使えば、生地を傷めずにシワを伸ばせます。
まとめ
テンセル生地とは、ユーカリからつくられた植物由来の再生繊維のことで、レンチング社の登録商標です。生産時に環境への配慮がなされた、地球にやさしい繊維であると国際的に認められています。
テンセルは伸縮性や通気性、柔軟性にすぐれた肌触りのよい生地で、ワンピース・ブラウス・ストール・バッグ・寝具などのさまざまな用途に使えます。一方で、摩擦に弱い・シワになりやすい・虫食いやカビが発生しやすいと言った欠点が発生しやすく、お手入れの際には注意が必要です。