レーヨンとは?素材の特徴・洗濯時の注意点も
レーヨンとは人工的に作られた化学繊維の一種です。レーヨンは再生繊維に分類される素材であり、吸水性と放湿性に優れていることが特徴です。シルクに近い素材で通気性が高いため、さらっと着られる春夏用のシャツやスカートなどの衣料品に多く利用されています。
この記事では、再生繊維であるレーヨンの歴史や特徴を紹介します。また他の化学繊維の生地との違いや取り扱いの注意点、洗濯方法についても解説するため、ぜひ手芸やハンドメイドの作品作りの参考にしてください。
目次1
レーヨンとは?
レーヨンとは、木材パルプから取れる天然素材を原料に、薬品加工処理をした「再生繊維」の1つです。レーヨンは石油から作られる「合成繊維」とは違い、原料が自然由来の天然繊維のため、環境に優しい素材となっています。
レーヨンは高級素材である「シルク(絹)」の代替となる安価素材として、開発されました。開発当初は素材の強度や耐火性に課題がありましたが、現在は加工技術の進歩により、大幅に改善されました。
レーヨンの大きな特徴は、シルク同様に通気性に優れている点です。また、静電気が起こりにくい素材でもあるため、洋服の裏地などに多く使用されています。レーヨンは繭からできる絹と違い、人工的に絹糸に寄せて製造された化学繊維であることから、人造絹糸を略した「人絹(じんけん)」とも呼ばれています。
レーヨンはどんなアイテムに使用されている?
レーヨンを使用したアイテムは、身近なものだと「シャツ・ブラウス・ルームウェア、肌着」などが挙げられます。シルクのようなとろみのある肌触りと爽快な着心地を兼ね備えているため、暑い時期でも汗がべたつくことなく、さらりと着こなせる点が人気です。
また、滑らかで柔らかい質感や通気性・吸湿性の高さを生かし、シーツなどの寝具やカーテンなどのインテリア用品、ジャケットの裏地など幅広いアイテムに使用されています。さらに、染料をよく吸水する特性があり、発色がきれいなことから、ハンドメイドで柄ものの生地や鮮やかな色の生地を使用したい際もおすすめです。
再生繊維とは?
レーヨンは、再生繊維の一種です。再生繊維とは、ペットボトルや木材・綿などの材料を薬品で一度溶解し、紡糸として再生したものです。
再生繊維は「植物系」「化学系」の2種類に分かれ、レーヨンは植物系再生繊維に属し、材料は木材パルプまたは綿セルロースを使用しています。化学系再生繊維は、ペットボトルの原材料であるPETを材料にして作られています。
植物系で作られた再生繊維は、土に埋めると微生物によって分解されるため、土に還る性質があります。また、燃やしても有毒ガスが出ないという特徴もあります。一方、ペットボトルから作られる化学系の再生繊維は、土に埋めても分解されませんが、ペットボトルのリサイクルにつながります。
再生繊維は、天然由来の原料を使っている点や土に分解される点、また資源を再利用している点などから、環境に優しい素材と言われています。
レーヨンの起源・歴史
レーヨンは歴史が古く、1884年にフランスのイレール・ド・シャルドネ氏が「硝酸セルロース」と呼ばれる人工絹を発明したことが起源です。硝酸セルロースは耐火性が低く、硝酸セルロースで作った衣服を着用したモデルが炎上死するなど、当時は危険性が高いものでした。
試行錯誤を繰り返し、1898年にビスコース溶液を元にした、レーヨンの製造方法が発見されます。その後、1905年のイギリスにてビスコース法によるレーヨンの工業生産が始まったことをきっかけに世界中に広まりました。
日本においてもレーヨンの国内製造を目指し、さまざまな会社が参入し、工場を立ち上げます。質を高める努力を続け、1930年代に日本国内のレーヨン工業は世界トップクラスの規模に成長しました。現在、レーヨンは世界中で生産され、幅広いアイテムに使用されています。
レーヨンの主な特徴
レーヨンの特徴は、以下の通りです。
レーヨンの主な特徴・性質
- 高級感のある滑らかな肌触り
- 静電気が起こりにくい
- 通気性・吸湿性に優れている
- 染色性が高い
- 価格が安い
レーヨンは、シルクに似た光沢のある滑らかな肌触りが特徴で、繊細なフィラメント糸を使用しているため、軽さと柔らかさも兼ね備えています。また熱伝導率も高く、生地に触れたときに少しひんやりする性質があり、夏でも清涼感のある着心地を実現できます。
電気抵抗値が低いレーヨンは、静電気が起こりにくい素材です。衣服が肌にまとわりつく不快感を防ぎやすいことから、洋服の裏地にも多く使用されています。さらに、レーヨンは人工繊維のため、比較的安価でシルクと似た素材を楽しめるというメリットもあります。
洗濯時の注意点は?
レーヨンは吸水力に優れている反面、水分や摩擦に弱い性質があります。縮みやすく、しわになりやすいため、家庭で洗濯するには難易度が高い素材の1つに挙げられます。基本的には自宅で洗濯せずに、ドライクリーニングに出すことをおすすめします。
ただし、レーヨン素材の中には、コットンやポリエステルが含まれた混紡素材や、水洗い可能な「ウォッシャブルレーヨン」もあるため、洗濯前には品質表記を確認してからお手入れしましょう。
「水洗い可能」と表示がされている場合でも、水や摩擦に強いわけではありません。できれば手洗いがおすすめですが、洗濯機を使う場合は以下の点に注意しましょう。
- おしゃれ着用洗剤を使う
- 洗濯ネットに入れる
- 30℃以下の水を使用し、短時間で洗う
- 脱水は10秒程度
レーヨンは、干す際にも注意が必要です。日光に直接当ててしまうと色褪せする可能性があります。また、型崩れもしやすく、ハンガーを使うと生地が伸びてしまう場合もあるため、風通しのよい日陰で平干しするとよいでしょう。
レーヨンと他の生地・素材の比較
衣類の裏地に使用される素材は、レーヨンの他にポリエステル・キュプラなどが挙げられます。肌触りや風合いなどは似ていますが、それぞれ異なる特徴があります。
以下では、ポリエステル・キュプラの生地の特徴を紹介し、レーヨンとの違いについて解説します。
ポリエステル
ポリエステルは、主に石油などの化合物を原料にして作られる合成繊維です。一般的にポリエステルと呼ばれるものは、ほとんどがペットボトルの原料として知られる「PET(ポリエチレンテレフタレート)」で作られています。PETを原料にしたアイテムは、衣類を中心にカーテンなどのインテリア用品、リネン、テント・傘などがあります。
ポリエステルは、熱や摩擦に強く、縮みや型崩れをしにくいことが特徴です。取り扱いが容易であり、大量生産できるため、ポリエステル素材のアイテムは手に入れやすい価格設定のものが多くあります。
レーヨンとの違いは吸湿性が低く、静電気が起こりやすい点です。衣類の裏地にポリエステルが使用されていると、冬場は静電気で服が肌にまとわりつくこともあります。着心地へのこだわりが高い方は、組成表示をよく確かめてから購入しましょう。
キュプラ
キュプラとは、コットンリンターと呼ばれる天然素材を原料にした再生繊維を指します。コットンリンターとは、綿花から数センチほどの長い繊維を採取した後に残った、数ミリ程度の短い繊維のことで、「リンター」とも呼ばれています。
リンターはそのままの状態だと紡績することが難しいため、レーヨンと同様に一度原料を融解し、長い繊維に人工的に再生します。キュプラは「銅アンモニア法」という、リンターを酸化銅アンモニア溶液で溶かし、ポンプを通して凝固液の中に押し出し繊維に凝固形成させる製法で作られています。銅アンモニア法を使って生産されていることから、「銅」を意味する「キュプラ」と名づけられました。
キュプラはレーヨンよりも摩擦や紫外線に強く、吸水性・染色性も優れています。しわになりにくく手触りもよい素材です。光沢がある質の高い生地のため、和装やオーダーメードスーツなどの裏地にも使用されています。こまめにケアをすることで風合いが長持ちするため、ハンドメイドをする際は、素材の特徴を掴んでおくとよいでしょう。
まとめ
レーヨンは、シルクの代替品として開発された再生繊維のことです。吸水性・吸湿性に優れているため、シャツやブラウス、衣類の裏地にも使用されています。レーヨンは熱伝導率が大きく、ひんやりとした質感が特徴で夏でも心地よく着られることが魅力です。
メリットの多いレーヨンですが、水や摩擦、直射日光に弱いという性質もあり、自宅での洗濯はあまりおすすめできません。しかし中には、自宅で洗濯できる素材もあるため、洗濯表示を必ず確認してからお手入れしましょう。
レーヨンの他にポリエステル、キュプラなどの生地の特徴も紹介しました。特徴や違いを知り用途に合わせて素材選びをすることで、ハンドメイドの生地選びに悩むことも少なくなるでしょう。ぜひ参考にしてください。