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公開日: 2023.05.19
最終更新日: 2023.05.19

アムンゼン生地とは?特徴や梨地織りとの関係・主な用途を解説

アムンゼン生地とは?特徴や梨地織りとの関係・主な用途を解説

アムンゼン生地とは、不規則な小さい凹凸がある生地のことです。通気性がよくサラサラとした着心地であることから、スーツや和装などにも使われる素材です。アムンゼン生地に興味がある人の中には、生地の特徴だけでなく、似た特徴をもつ生地との違いを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、アムンゼン生地の特徴や主な用途、アムンゼン生地と似た生地の種類を紹介します。洋服や小物を手作りしたい人や、ハンドメイドを趣味にしている人はぜひ参考にしてください。

アムンゼン生地とは?

アムンゼン生地とは、不規則な小さい凹凸がある生地のことです。梨地織りの1つであり、組織は変わり綾です。昭和に入るまで、毛織物は捺染(なっせん)という染色方法ができないとされていましたが、なんとか捺染を可能にしたいとの思いから、愛知県尾州でアムンゼン生地が開発されました。アムンゼンという名前は、アムンゼン生地誕生と同じ頃、1911年にノルウェーの同名探検家が人類で初めて南極点に到達したことに由来し、命名されたと言われています。

以前は、ウール素材の梨地織りのみアムンゼン生地と呼ばれていましたが、現在では毛の種類に関係なく織り方によって区別されています。

アムンゼン生地と梨地織りの関係

アムンゼン生地は、梨地織りの一種です。梨地織りとは、縦糸・横糸を不規則に浮かせながら織り、梨の皮のような小さなシボを作る織り方のことです。さらに撚りの強度を高めた糸を使用すると、凹凸を大きくつけることもできます。梨地織りには、梨地ジョーゼット・モスクレープ・オートミールなど、いくつか種類がありますが、中でも代表的な生地がアムンゼン生地です。

アムンゼン生地とメロンアムンゼン生地の違い

アムンゼン生地とメロンアムンゼン生地の違いは、シボの大きさです。メロンアムンゼン生地は、織る際にアムンゼン生地よりも大きく糸を浮かせているため、メロンの皮のように凹凸が大きく目立ちます。そのため、「無地のアムンゼン生地ではシンプルすぎてものたりないけれど、模様があると少し派手になるため避けたい」と考えている人にもおすすめです。アムンゼン生地と比べて滑りにくく、少し厚みがあり、強度もアップしているため、主に風呂敷や着物の帯などにも使用されています。

アムンゼン生地の特徴

アムンゼン生地の主な特徴は、以下の3つです。

・ハリ感とドレープ性がある
ある程度の厚みがあり、密度のある質感ながら、凹凸がエアリーで優美な印象を演出します。また、生地を垂らすと自然とヒダができ、動いたときに美しくしなやかに揺れるのも魅力です。ほどよく身体のラインに沿い、美しいシルエットを作るため、スカートやワンピース、ドレスの素材にも適しています。

・上品で高級な印象を与える
光沢はないものの、凹凸があるため、単色の生地でも光の当たり方や角度によって微妙な色味の違いが出て、深みが感じられます。ハリ感やドレープ感とも相まって、ラグジュアリーな雰囲気があります。安っぽい印象にならないため、フォーマルウェアの生地や、合わせる小物に使用するのもおすすめです。

・着心地がいい
凹凸により、肌と生地の間に空間が生まれ、通気性がよくサラサラとした着心地です。汗をかく季節でも、生地が肌に張り付きにくく、快適に着られます。また、もともとシボが入った生地であるため、着用時や収納時にシワがついてしまっても目立ちません。面倒なアイロンがけが不要であり、旅行に持っていく服としても優秀です。

アムンゼン生地は、チープさを感じさせない見た目と、夏でも快適な着心地を両立した生地であると言えます。

アムンゼン生地の主な用途

アムンゼン生地は表面に凹凸感があるため、肌への張り付きを抑えサラサラとした清涼感を感じさせる素材です。アムンゼン生地を使用した服は春から秋にかけて着用するアイテムとして人気で、リッチな印象を与えることからフォーマルウェアの生地にも使われています。

ここでは、アムンゼン生地の主な用途を解説します。

スーツ

アムンゼン生地の用途として人気なのが、スーツです。アムンゼン生地は身体に心地よくフィットするので、スタイリッシュな印象に仕上がります。また、光の当たり加減によって、シボによる独特の光沢感が出るため、無地でもさりげない存在感を発揮します。使用する素材によって季節を問わず活躍し、ウールなど秋冬用の素材で仕立てても、軽くて暖かい着心地の良さが魅力です。ほかの生地にはない風合いがとてもファッショナブルであるため、シンプルながらもワンランク上の着こなしを楽しめます。

和装

アムンゼン生地は、和装にも適しています。独自のシボが高級感を演出するため、はんなりとした雰囲気に調和します。きれいなドレープ感があり、動いたときに袖や裾の表情が美しいのも利点です。また、やわらかい生地感のアムンゼン生地は、家庭用ミシンや手縫いでも縫いやすく、使い勝手がよいためハンドメイドにも向いています。普段着の和装や和装小物にはもちろん、本格的なコスプレ衣装や舞台衣装用に使用するのもおすすめです。ポリエステルなどの素材であれば家庭で洗濯ができ、シワも目立ちにくいためお手入れも簡単です。

風呂敷

アムンゼン生地は、風呂敷にもよく使われています。中でも、メロンの皮のようなシボが特徴であるメロンアムンゼン生地は、通常のアムンゼン生地よりも強度や耐久性が期待できるため、風呂敷によく採用されています。アムンゼン生地は、独特なシボ感がちりめんのような風合いを醸し出すため、和の雰囲気にもぴったりです。また、プリントとも相性がよいため、さまざまなカラーバリエーションや和柄の風呂敷を楽しめます。

アムンゼン生地と似た生地の種類

ここでは、アムンゼン生地と似たザラザラ感やドレープ感のある生地を3つ紹介します。

ちりめん

ちりめんは、別名クレープ織りとも呼ばれる、表面に細かいシボのある生地です。縦糸に撚っていない糸を、横糸に撚りの方向の異なる糸を交互に使用することで、独特の凹凸感を生み出しています。古くから和装や和小物の生地として親しまれており、強度を備えているのも魅力です。ちりめんといえばシルク素材が大半でしたが、近年ではポリエステル素材を使用した水に濡れても縮まないちりめんも登場しています。

ジョーゼット

ジョーゼットは、正しくは「ジョーゼット・クレープ」や「クレープ・ジョーゼット」と呼ばれる、かなり細かいシボのある生地です。シルク製が基本ですが、近年ではポリエステルなどの化学繊維も多用されており、毛を使用したものもあります。縦糸・横糸ともに撚りのある糸を使用しており、粗く織っているため透け感があるのも特徴です。サラリとした手触りであり、春夏の涼しげな洋服にも適しています。また、繊細なギャザーも作りやすいため、華やかでかわいらしい印象も演出できます。

シフォン

シフォンは、細かいシボとシースルーが特徴の薄手生地です。非常に細い糸を使用し、縦糸と横糸を垂直に交差させながら織っています。粗めに織っているため、糸と糸の間に隙間ができ、軽くて空気を含んだようなふんわりとした肌触りであり、シワにもなりにくい生地です。コットンやシルクでも織れますが、近年ではポリエステルなどの化学繊維を使用することが増えています。ドレープ感を作りやすいため、ウェディングベールやブラウス、ランジェリーなどにも使用されます。

上記の生地はアムンゼン生地と似ていますが、シボの大きさや透け感などが少しずつ異なります。実際に実物を見てみるなどして、作りたいもののイメージに適した生地を選んでください。

まとめ

アムンゼン生地は凹凸があるため、光の当たり方によっては色味の違いが出て上品・高級な印象を与える素材です。通気性がよくサラサラとした着心地であることからスーツに使われたり、きれいなドレープ感があることから和装に使われたりします。

アムンゼン生地と似た生地には、表面に細かいシボがある「ちりめん」や、シボとシースルーが特徴の「シフォン」などがあります。生地は素材によって特徴が異なるので、作りたいもののイメージに合わせて選びましょう。