スーツに使われる生地を紹介|生地の選び方と産地による違いも
スーツを自分で制作する場合、まずはスーツに使われる生地の種類と特徴を知ることが大切です。スーツも他の服と同様に、さまざまな種類の生地が使われています。生地によってスーツの見た目や性能が大きく変わるため、自作する際は「スーツに何を求めているのか」も明確にしましょう。
今回は、スーツに使われる生地の特徴と注意点、生地の選び方について解説します。さらに、産地による生地の違いもまとめているので、スーツを自作したい人はぜひ当記事を参考にしてください。
目次1
スーツに使用される生地は?
ハンドメイドスーツの素材やスーツのオーダーでは、ウール(羊毛)でできた生地がよく使用されます。ウール以外だと、高級感や伝統を大切したいならシルク生地やカシミヤ生地、カジュアルさやコスパを重視するならコットン生地やポリエステル生地がおすすめです。
ここでは、スーツに使用される生地の特徴と、扱う際の注意点を紹介します。
ウール
ウール | |
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ウールの主な特徴 |
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ウールを使ったスーツの注意点 |
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オールシーズン使えるスーツを仕立てるなら、ウール生地がおすすめです。ウール生地には梳毛糸や紡毛糸などの種類があり、織り方によって風合いや特徴が異なります。
また、ウール生地は数字が高いほど細くて高級な糸を使っています。ウール生地を選ぶ時は、糸の数字にも注目するとよいでしょう。
シルク
シルク | |
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シルクの主な特徴 |
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シルクを使ったスーツの注意点 |
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シルク生地はエレガントなツヤがあり、より高級感のある仕立てにしたい時におすすめの生地です。
スーツ生地でよく使用されるシルク素材のメリットを取り入れた、ウールシルクという混合素材があります。混紡素材を選ぶ場合、ビジネスシーンに適した硬派な印象にするなら混紡率20%前後、イベントやパーティで着用できる華やかな印象にするなら混紡率40%前後を選ぶとよいでしょう。
カシミヤ
カシミヤ | |
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カシミヤの主な特徴 |
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カシミヤを使ったスーツの注意点 |
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秋冬用のスーツを仕立てる時は、カシミヤ生地を選ぶと実用性と高級感を両立できます。生地の品質は1級から9級までランク付けされていて、ランクが変わると手触りや見た目の印象も変わります。予算と相談しながら、イメージに合うグレードを選びましょう。
コットン
コットン | |
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コットンの主な特徴 |
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コットンを使ったスーツの注意点 |
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コットン生地で仕立てられたスーツは、取り回ししやすく、カジュアルで個性的な印象を与えます。さらっとした感触で、汗ばむ夏向けの仕立てにも向いています。価格も比較的安価なので、練習用に一着作りたい時にもおすすめです。
ポリエステル
ポリエステル | |
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ポリエステルの主な特徴 |
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ポリエステルを使ったスーツの注意点 |
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安価で扱いやすいスーツを仕立てたいのであれば、ポリエステル生地を選ぶとよいでしょう。防カビ性を備えた製品もあり、機能性を重視する人にも向いています。スーツを汚したり傷めたりすることが多い人や、頻繁に仕立て直したい人におすすめです。
スーツ生地の選び方
スーツをハンドメイドするにあたって、お気に入りの一着を作るために重視したいのは、「光沢・ツヤ」「肌触り」「ストレッチ性」「季節感」の4要素です。また、着用する時期・シーンや着る人の好きなスタイルをイメージしながら生地を選ぶことで、違和感なく日常的に着られるスーツが仕上がります。
ここからは、スーツ生地選びにおいて重要な4つの要素について解説します。
光沢・ツヤ
スーツ生地の光沢・ツヤは、見た目の印象を大きく左右する上で大切な要素です。
生地ごとの輝きの出方は、織り方と素材で決まります。華やかさを求めるなら輝きの強い生地を、落ち着いた印象をもたせたいなら輝きの弱い生地を選びましょう。
織り方\素材 | 天然繊維 | 化学繊維 |
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綾織 |
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平織 |
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繻子織(サテン織) |
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肌触り
スーツ生地の肌触りは着心地に影響します。肌触りが良くないスーツは無意識に着崩すようになり、高級感や品格が損なわれてしまいます。
生地の感触を決めるのは、素材と品質です。化学繊維と比べて天然繊維はスムースで違和感のない手触りです。天然繊維でできた生地の中でも高級な生地・グレードの高い生地は、ゴワつきが少ない素材が使用されるため肌触りが良くなります。
- ウール:ハリがあり、程よくざらつきがある
- シルク:柔らかく、滑らかでさらさらしている
- カシミヤ:柔らかく、引っかかりが気になりにくい程度のざらつきがある
- コットン:糸番手が小さいほど硬くざらつき、大きいほど柔らかく滑らか
- ポリエステル:シルクに近く、ややざらつきのある肌触り
ストレッチ性
スーツ生地のストレッチ性は、シワのつきにくさ・着用した時の動きやすさに関係します。生地のストレッチ性が高いと、フィット感のおかげで身体が動かしやすくなり、シワも滅多につきません。
また、アイロンの使用を最小限にして生地の傷みを防ぐと、パリッとした印象を保つことができます。他にも、着用できる体格に幅をもたせられるのも魅力です。
- 伸縮性なし:シルク、カシミヤ、コットン
- 伸縮性あり(小):ウール生地
- 伸縮性あり(中~大):ストレッチポリエステル生地、ポリウレタン混紡生地
季節感
スーツ生地を選ぶ時は、着る時期に合うものを選ぶことも重要です。
季節外れのスーツを着用すると、体感温度の調整が難しくなるばかりか、場に馴染まない印象を与えてしまいます。夏に冬向けの生地で作られたスーツを着ると、スーツが汗や皮脂を吸い込み、手入れが甘いと保管中に虫食いや黄ばみが起こるおそれがあります。
季節にあわせて生地を選ぶ時は、下記を参考にしてください。
- 春夏に適したスーツ生地:ウール、コットン、シルク
- 秋冬に適したスーツ生地:ウール、カシミヤ
スーツの産地による生地の違い
スーツ生地の品質や特徴は、原産国でも違いが出ます。
スーツ生地の代表的な産地であるヨーロッパ2か国と、日本の計3か国の製品の特色を紹介します。
イタリアの生地 |
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単糸を使った、軽くて柔らかく、ツヤのある生地が多いのが特徴です。イタリア人の繊細な色彩感覚が反映されて色柄が多彩なので、流行の生地から個性的な生地まで種類が豊富にあります。一方で、耐久性が低い生地が多いため取扱いには注意が必要です。 代表的な産地:ビエラ おすすめの人:着心地やデザイン性を重視する人 |
イギリスの生地 |
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双糸を使った、ハリ・コシがあり、ざらっとした見た目の生地が多いのが特徴です。スコットランドのウールを使って生産されるツイード生地が有名で、カジュアルな服や小物にも使用されます。保温性や耐久性に優れ、見た目の印象は伝統的かつクラシカルです。 代表的な産地:ハダースフィールド おすすめの人:重厚感や品格、格式のある着こなしがしたい人 |
日本の生地 |
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国内の生地メーカーは、世界的に評価される高い技術が用いられ、滑らかな光沢感と高い耐久性が特徴です。色や柄は落ち着いたものが多く、普段使いに向いた機能性生地の種類が豊富にあります。日本人の体型や好みに合わせやすい点がメリットです。 代表的な産地:尾州 おすすめの人:バランスや馴染みを重視する人、耐久性重視の人、国産指向の人 |
まとめ
スーツに使われる主な生地は、ウール、シルク、カシミヤ、コットン、ポリエステルです。生地によってハリや光沢感、肌触りが異なり、周囲に与える印象も変わります。
スーツの生地を選ぶ時は、光沢・ツヤ、肌触り、ストレッチ性、季節感の4つに注目しましょう。光沢・ツヤによって周囲に与えたい印象が変わります。また肌触りやストレッチ性を重視すると、着心地の良いスーツを仕立てられます。スーツを着用する季節が決まっているなら、季節に合った生地を選ぶのもおすすめです。
スーツは産地によっても生地の特徴が異なります。生地の特徴はもちろん、何を重視しているのか、いつ着用するのかなどスーツを用意する目的を明確にした上で、適した生地を選びましょう。