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公開日: 2022.07.26
最終更新日: 2022.07.26

アクリル生地の特徴・性質|ウールとの違いも解説

アクリル生地の特徴・性質|ウールとの違いも解説

アクリル生地は、ニット製品やセーターなどによく使われている化学繊維の1つです。肌着や靴下などの衣料品から、カーペットまたは毛布などの日用品まで幅広く使われており、日々の生活に欠かせない存在となっています。しかし、アクリル生地の特徴や、同じようにセーターに使われているウール生地とどのような違いがあるのか、よく分からない面も多いです。

そこで今回は、アクリル生地の特徴や性質、ウールとの違いについて解説します。手芸・ハンドメイドに興味のある方や作家の方は、ぜひ当記事で正しいアクリル生地の知識を身に付けてください。

アクリル生地・アクリル素材とは?

アクリル生地とは、石油を原材料とする繊維です。生地製法は石油から取れる「アクリロニトリル」を溶剤に溶かし、液状にしたものを小さな穴から押し出して糸状にすると、アクリル生地が完成します。アクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルを主成分としてアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルと共重合させています。アクリロニトリルは19世紀末に発見され、その後アクリルが繊維化されました。

アクリル繊維とは別に「アクリル系繊維」と呼ばれる繊維が存在します。名前は似ているものの、同じものではありません。アクリル繊維とアクリル系繊維では、アクリロニトリルの割合が異なります。アクリル系繊維の中にはポリアクリロニトリル以外の繊維も含まれています。

アクリル繊維ポリアクリロニトリル:85%以上
アクリル系繊維ポリアクリロニトリル:35~84% その他:塩化ビニルまたは塩化ビニリデン

アクリル系繊維は2022年より「モダクリル」へと表示が変更されています。また、プラスチック製のアクリル樹脂も素材が異なるため、アクリル繊維ではありません。

化学繊維と合成繊維の関係性は?

合成繊維は化学繊維の1つです。化学繊維は合成繊維と再生繊維の2種類に分かれ、ポリエステル・ナイロンなどの石油を原料とする合成繊維と、レーヨン・テンセルなどの天然の木材から作られた再生繊維が存在します。その2つをまとめて化学繊維と呼びます。化学繊維は加工しやすく大量に生産が可能なため、比較的リーズナブルな価格で購入可能です。

合成繊維であるポリエステル・ナイロン・アクリルは、石油や炭酸ガスの原料からほぼ同じ工程で作られており、三大合成繊維と呼ばれています。衣服のおよそ半分以上は合成繊維からできているため、意識せずとも合成繊維を使った商品を身に着けていることも少なくありません。しかし、化学繊維は吸水性が優れず静電気を発生しやすい上に、化学薬品を利用しているため、肌荒れやアレルギーを起こす恐れがあるというデメリットもあります。

繊維には、化学繊維の他に天然繊維が存在します。天然繊維は綿、麻の植物繊維と羊毛やカシミヤなどの動物繊維の2種類に分かれ、原料はすべて自然界にあるため、敏感肌に優しく着る相手を選びません。

繊維によってさまざまな性能が存在します。化学繊維や天然繊維の生地の特徴について理解を深め、それぞれにあった使い方を選びましょう。

アクリル生地はどんなアイテムに使用されている?

汎用性に優れているアクリル生地は、アクリルニットやセーターの他にも幅広く使われています。洗剤を使わずに食器が洗えるアクリルたわしや、丈夫で水をあまり吸わない特性を生かしたクロスなどの水回りの掃除アイテムにもおすすめです。

また、フェルトもアクリル繊維からできています。コットンのようなふわふわとしたフェルトは、ぬいぐるみなど手芸小物の制作にも適していて、お部屋のインテリアとしても使えます。洋服を仕立てる場合には、保温性に優れているためワンピースやポンチョ、ブランケットなど秋から冬にかけてのアイテムに最適です。他にはニット帽や手袋、マフラーなどの冬の小物を作る際にも使いやすく、さまざまな用途で活躍します。

アクリル生地の主な特徴・性質

アクリル生地には「アクリル短繊維」と「アクリル長繊維」の2種類があります。衣服用にはウールと特徴が似ている短繊維がよく使われているため、今回はアクリル生地の短繊維の主な特徴をご紹介します。

アクリル生地の主な特徴・性質

  • 保温性に優れている
  • 水を吸いにくいため乾きが早い
  • 日光に強く耐候性がある
  • 虫食いの心配がなく保管がしやすい
  • ウールに比べ価格が安い
  • 毛玉がつきやすい

アクリル生地は繊維に弾力性があり、シワになりにくく扱いやすい素材です。また、ボリュームのある素材でふわふわした肌触りをしており、小さな子どもにも安心して使えます。さらに染色性が高く、カラーバリエーションが豊富かつ発色がきれいなため、デザイン性に優れているのが特徴です。退色性もあり、日焼けや色落ちの心配もありません。

また、アクリル製品は工場で大量に生産が可能です。ウールに比べて手に取りやすい価格なため、さまざまなファッションを楽しむにはうってつけの素材といえます。

アクリルとウールの違い

アクリルとウールは、見た目や特徴で似ている点が多いものの、使用感や洗濯・保存方法は異なり、同じように扱うと生地が傷む恐れがあります。アクリルとウールの違いについてきちんと理解し、正しい方法で扱いましょう。

ウールの特徴としては、保温性に優れている、水分をはじく性質により汚れにくい、水分を多く含むと縮むことが挙げられます。ウールの特徴を踏まえた上で、アクリルの生地との違いを解説します。

ウールとアクリルの違いは素材にあります。ウールは主に羊の毛で作られている天然素材であるのに対し、アクリルは人工的に作られた合成繊維です。アクリルはウールに比べ価格が抑えられているため、手に取りやすいメリットがあります。

ウールは吸湿性、放湿性ともに優れており、さわやかな着心地が続く反面、水分を含むと縮みやすく湿気でカビが生えやすいです。一方、アクリルはカビや虫食いに強いものの、吸水性が悪く蒸れやすい面があります。着心地の面で考えるとウールのほうが優れていますが、カビや虫食いには十分に気を付けましょう。

アクリル生地を洗濯する際の注意点は?

アクリル生地を洗う前に、衣服についている洗濯表示を確認しましょう。アクリルには主に3つの洗濯表示が使われており、表示を見ることで洗濯方法を確認できます。

アクリル生地によく使われている洗濯表示は、下記の通りです。

  • 水洗いできない
  • 洗濯機で洗える
  • 手洗いできる

水洗い不可のマークは自宅で洗えないため、クリーニングに出しましょう。洗濯機で洗える場合は洗濯物を裏返し、汚れている部分が外側にくるように折り畳みネットに入れます。洗濯機に中性洗剤を入れ「ドライコース」や「手洗いコース」を選んで洗濯をしてください。

手洗いの場合は洗面器もしくは洗面所のシンクに水を張り、適量の中性洗剤を入れます。アクリル衣類を洗浄液に浸し、つけおき洗いもしくは手で優しく押して、汚れを浮かせます。洗剤をすすぐ際は洗面器の水を3回ほど替え、泡が出なくなるまですすぎましょう。すすぎを終えたら衣類を洗濯ネットに入れ、洗濯機で10秒程脱水にかけます。仕上げに柔軟剤を溶いた水に軽く浸し、再び10秒脱水を行い終了です。

洗ったアクリル製品を乾かす際に乾燥機を使うと、熱で傷む恐れがあります。風通しの良い場所で平干しするか、ハンガーを複数使い、なるべく広い範囲に風が当たるように干してください。

まとめ

アクリル生地は合成繊維であるものの、天然素材のウールのような柔らかさと、水への耐久性を兼ね備えています。そのため、ニット素材からお掃除用品にまで使われており、まさにいいとこどりな生地です。それでいてウールよりも低価格で手に取りやすく、保存方法も扱いやすいためハンドメイドにも適しています。

アクリル生地ならではの特徴を理解し、ウールとの違いをきちんと理解した上で洋服を仕立て、今後のハンドメイド活動をより素敵なものにしましょう。