ツイード生地の特徴・性質|代表的な種類も解説
ツイード生地は、非常に丈夫でありながら保温性が高く、オシャレな印象を与えることができるため、衣服だけでなくバッグやポーチなどさまざまなアイテムで幅広く使用されています。
ツイードを使ったアイテムを作りたいけど、ツイード素材の特徴や性質が分からない、ツイード素材の注意点を知りたい、という方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、ツイード生地について押さえておきたい特徴や性質、代表的なツイードの種類について解説します。お手入れの際の注意点についても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
目次1
ツイードとは?
ツイードとは、太い紡毛糸を使って織られた平織り、または綾織りの生地の総称です。紡毛糸とは、短い羊毛繊維を紡いで作った糸のことです。短い繊維を紡いでいることから、繊維の中に空気がたくさん入るため、保温性が高くなります。秋冬用のジャケットには定番の素材で、近年はツイードスーツなども広く普及しています。
ツイードは、ふんわりとした風合いや柔らかな肌触りを実現できる「縮絨(しゅくじゅう)」や「起毛」などの処理を一切行わないことが大きな特徴です。縮絨や起毛処理を行わないことで、織り目がはっきりと表れ、硬くざっくりとした手触りの自然な仕上がりの生地になります。織り目が明確なことから、ツイードには「ヘリンボーン」や「チェック」、「千鳥格子」などの多くの柄が存在します。
またツイードの中には、春夏用のコーデに使える「サマーツイード」という種類もあります。ツイードの素材となるウールにシルクやリネンなどを混ぜることで、通気性や吸水性に優れた生地となるため、汗ばむ時期でも快適に過ごすことができるでしょう。
ツイードはどんなアイテムに使用されている?
ツイードは、ジャケットやワンピース、スカートなどの衣類はもちろん、鞄やポーチ、ペンケースなど幅広いアイテムに使われています。ツイードがさまざまなアイテムに使用される理由は、多種多様な色柄があり、どの柄も高級感があるためです。千鳥格子やチェック柄など、カジュアルなコーディネートにツイード素材のものを1点加えるだけで、一気にワンランク上の装いにすることが可能な点が人気の理由です。
また、ツイードは生地が丈夫なことから、鞄や財布といったアイテムにもよく使われます。使用する糸の配色によって生地の色合いを無数に生み出すことができるため、自分好みのアイテムを見つけることができるでしょう。
ハンドメイドでツイードを使った衣類を作る場合は、裏地をつけることが多いため、少し難易度が高いかもしれません。裏地を必要としないパンツやスカートは、比較的作りやすいファッションアイテムです。
また、バッグやポーチを作る際は、レザーなど他の生地と組み合わせることで、より個性的なオリジナリティ溢れる作品を生み出すことができるでしょう。汚れも目立ちにくいため、タブレットケースやブックカバーなどにも最適です。
ツイードの歴史
ツイードの語源は、イギリスとスコットランドの国境に位置するボーダー地方で織られていた、荒くて硬い綾織りのツイル(twill)からきています。元々は農民の防寒着として、過酷な冬の寒さから身を守るために飼育している羊の毛を刈りとって作られました。
このツイルは18世紀中頃、スコットランド語で「tweel」と綴られ、ツイード(tweed)川流域で生産されていました。その際にロンドンの商人が「tweel」を「tweed」と誤記してしまったため、ツイードという名前で普及するようになりました。
18世紀終わり頃には、染料をより鮮やかにする技術が発明されたり、スコットランドとロンドンを結ぶ鉄道路線が完成したりしたことで、多くの工場で生産されるようになりました。ツイードはその後さまざまな地方で作られるようになり、ブランド化が進みました。
ツイードの主な特徴・性質
ツイードは発祥地や産地によりいくつかの種類に分けられます。種類によって、生地の手触りや着心地はさまざまですが、ここではツイード全般が持つ特徴について紹介します。
ツイードの主な特徴・性質
- 防寒性が高い
- 耐久性に優れている
- 鮮やかで美しい色合い
ツイードは、保温性の高いウールを素材とし、また短い羊毛を使って織られていることから繊維の使用量が増え、厚手で風を通しにくい、寒い時期にぴったりの生地となります。
また、起毛処理などを行っていないため、毛玉などができにくく、厚手のため丈夫で長持ちします。イギリスやスコットランドなどのヨーロッパでは、親子3世代に渡りツイードジャケットを受け継ぐ家庭もあるといわれるほど、耐久性に優れています。手触りは、最初は少し固めですが、使い続けることで柔らかく馴染んでいき、長く愛用して変化を楽しむことができる点も魅力の1つです。
さらに、ツイードは何色もの糸を使って織り上げるため、他の生地にはない鮮やかで美しいグラデーションが演出できる点も魅力の1つです。
洗濯時の注意点は?
ツイードは、洗い方によって生地が縮んだり色合いが変化したりすることがあります。ここでは、ツイードを洗濯する際に注意しておきたいポイントについて紹介します。
■洗い方
・洗濯機で洗う場合
洗濯機で洗う場合は、型が崩れないようにたたんでから洗濯ネットに入れて洗います。目立った汚れがある場合、汚れの部分に中性洗剤の原液をつけて洗濯しましょう。脱水後はすぐに取り出し、しわを伸ばします。
・手洗いする場合
手洗いする場合は、中性洗剤を30度前後のぬるま湯に溶かします。ツイードを沈めるようにしながら、優しく押し洗いします。無理に脱水をすると生地が縮む原因になるため、タオルなどで包み丁寧に水気を切るようにしましょう。
■干し方
脱水後しばらく放置してしまうと型が崩れてしまうため、時間を置かずに干しましょう。干す前にしわを伸ばして形を整えます。生地の縮みを最小限に抑えるためには、日陰干しがおすすめです。
以上の点を意識することで自宅での洗濯も可能になりますが、大切に使い続けたい洋服などの場合は、自宅で洗濯するよりもクリーニングに出すほうがよいでしょう。
代表的なツイードの種類
ツイードは発祥の地や使用する糸の特徴によって、いくつかの種類に分かれます。
食材やワインなどを選ぶ際に産地にこだわりを持つ方が多いのと一緒で、ツイードも原産地によって特徴や魅力は大きく異なるため、産地はツイードアイテムを選ぶ際の1つの指針となっています。
ここからは、ツイードの中でも「世界の3大ツイード」と評される代表的な3つの種類について紹介します。
ハリスツイード
ハリスツイードは、ツイードの王様といわれているブランドです。スコットランド北西に位置するアウターへブリディーズ諸島のハリス地方という土地で作られています。元々は田舎町に伝わる伝統的な生地で、漁師などが防寒用の服として使用していたことからも、庶民の生地として親しまれていました。
ハリスツイードは、ケンプ(死毛)と呼ばれる粗い毛が入っている点が大きな特徴です。高級生地というよりは、素朴な色合いやラフさが魅力で、日常のファッションに取り入れやすいツイードです。
またハリスツイード生地には、通称「オーブマーク」と呼ばれる宝珠と十字をモチーフにしたロゴが刻まれたタグがついており、シリアルナンバーも印字されています。このタグは、「英国ハリスツイード協会」の品質認定の証です。ハリスツイードは今でも、羊毛の選別や製織のほとんどを手作業で行っている上、ハリス地方でも伝統ある熟練の職人によって織られています。そのため、ハリスツイードの生地は、世界一品質のよいツイードだといわれています。
シェットランドツイード
シェットランドツイードは、スコットランドの北端にあるシェットランド島で作られているツイード生地です。ツイードの多くは繊維の太さがまばらな紡毛糸を使用しているのに対して、シェットランドツイードは繊維を平行に引き揃え、短い毛や不純物を除去した「梳毛糸」が使われています。
そのため、スポンジのようにふっくらとした感触が特徴です。柔らかさを生かしてセーターやコートとして使用されることが多く、分厚くて硬いものが多いツイードの中でも珍しい素材感です。
ドニゴールツイード
ドニゴールツイードは、アイルランドのドニゴール地方で生産されています。農家の人たちが手紡ぎ・手織りしており、糸の太さもまばらであるため、ラフな雰囲気と暖かみのある色合いが特徴です。
また、ドニゴールツイードには、ネップと呼ばれる糸のかたまりがよく見られ、そのネップがあることで染め上がりにむらが出て、味わい深い色に仕上がります。
ドニゴールツイードは、縦に白色、横にカラーのネップが現れるおしゃれな模様が特徴で、ハリスツイードに次ぐ人気ツイードです。保温性と耐久性を兼ね備えているため、ジャケットに最適な生地です。
まとめ
ツイードは、耐久性に優れ、鮮やかな色合いと柄が魅力の生地です。ツイードと一口にいっても、多様な種類があり色合いや肌触りもそれぞれ異なります。ツイードを使ったアイテムは、ジャケットなどの衣類だけでなく、鞄やポーチ、ブックカバーなどバリエーションも豊富です。
洗濯をする際は生地が縮まないように、洗濯ネットに入れる、陰干しをするなど注意しながら丁寧にお手入れしましょう。ツイードならではの美しい生地感や色合いを生かして、ツイードを使ったオリジナル作品作りにもぜひ挑戦してみてください。