シルク生地の特徴は?特徴・歴史・洗濯時の注意点
シルクは「繊維の女王」と評され、約5,000年前に中国で使用され始めてから今日に至るまで、常に世界中の人々を魅了してきた素材です。日本でも古くから親しまれ、幅広いアイテムに使われています。
「シルク=高級」というイメージが強いですが、実はシルクにも蚕の飼育方法や製糸方法の違いにより複数の種類があり、それぞれに特徴や魅力、価格が異なります。この記事ではシルク生地の特徴や種類、歴史を紹介します。シルク素材でできた衣服などを洗濯するときの注意点も解説しているため、シルクを取り扱う際の参考にしてください。
目次1
シルクとは?
シルクとは、蚕蛾(カイコ)という蛾の幼虫が生み出すタンパク質の糸で、日本語では「絹」と呼ばれています。強さとしなやかさを兼ね備えたシルクの生地は、滑らかで高級感があり、昔から多くの人の憧れを集めてきました。
ここでは、シルクが具体的にどのようなアイテムに使われているか、どのような種類があるのかについて紹介します。
シルクはどんなアイテムに使用されている?
シルクは日本で最も有名な素材の1つと言って良いほど、身の回りのさまざまなものに使用され、親しまれている存在です。シルクが使われるものとしては、以下のようなアイテムが挙げられます。
- ワンピースやシャツなどの衣服
- パジャマ、ルームウェア、ナイトキャップ
- 布団カバーや枕カバーなどの寝具
- インナー類
- スカーフやハンカチ
- マスク
肌触りが良く素肌に優しいため、衣類全般やマスクなど、肌に直接触れるアイテムを手作りする場合でも安心して使用できます。
また、吸湿性や放湿性にも優れていることから、枕カバーやシーツなどの寝具にも人気の生地です。さらにシルクに含まれる「セリシン」という成分は、抗酸化作用や皮膚の保湿性向上効果などがあり、シワやシミなどの皮膚の老化や肌の乾燥を防ぐ作用があると言われています。シルクの寝具で寝ると肌や髪が艶々になるという口コミもあるなど、美容に良い影響を与えることも期待できるでしょう。
シルクの種類
飼育方法の違い |
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シルクは、繭を作る蚕の飼育方法の違いに着目することで、2種類に分類できます。 1つは「家蚕(かさん)」と呼ばれる養殖の蚕から得られるシルクを指し、もう1つは「野蚕(やさん)」と呼ばれる天然の蚕から得られるシルクのことです。家蚕と野蚕はそれぞれ「マルベリーシルク」と「ワイルドシルク」という別名を持ちます。 家蚕は、元々天然の蚕でしたが、良質なシルク糸の安定生産を目指して品種改良が進められました。今では、世界各地で蚕の養殖が行われているため、最も生産量が多いタイプのシルクです。 |
製糸方法の違い |
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繭からシルク糸を製造する方法も1つではありません。製糸方法の違いから見たシルクは、生糸撚糸、絹紡糸、絹紬糸、特絹糸の4種類に分類可能です。製糸方法が違えば糸が持つ特徴も異なるため、種類ごとに違った手触りや質感が楽しめます。 4種類のシルク糸の具体的な特徴は、以下の通りです。 ・生糸撚糸(きいとねんし):フィラメントシルク 生糸撚糸とは、繭から引き出される切れ目のない1,000m程度の1本の絹糸を、数本撚り合わせて作られる糸です。天然繊維の中では、他に1,000m単位の長繊維が存在しないため、生糸は「天然繊維の女王」とも呼ばれます。キラキラした光沢感が特徴で、着物やサテン生地、インナー類などに使用されます。 ・絹紡糸(けんぼうし):スパンシルク 蚕が吐き出す最初の糸や最後の糸などは、太さが不均一なため、生糸の製造には向きません。そういった生糸の生産工程で切り落とされた「副蚕糸」のを紡績して作られるのが絹紡糸です。生糸が長繊維に分類されるのに対し、絹紡糸は短繊維に分類されます。生糸に比べて光沢感が少なめですが、ふんわりしていて、保温効果に優れた点が特徴です。防寒グッズや肌に直接触れるインナー類などにおすすめの素材です。 ・絹紬糸(けんちゅうし):ノイルシルク 紬糸は、生糸や絹紡糸を製造する際に得られる「ブーレット」という副産物を再利用して作る絹糸で、ふわふわのシルク真綿を紡いで生産されます。空気を多く含んだ太めの糸には、「ネップ」と呼ばれるシルク特有の節があり、コットンライクで素朴な肌触りが特徴です。肌馴染みが良く耐久性が高いため、靴下や手袋などに使われます。生糸よりも安く手に入る点も魅力です。 ・特絹糸(とっけんし) 延ばした真綿のような糸になる一歩手前の状態の「ペニー」や真綿、切繭などを原料とした絹紡糸と絹紬糸の中間クラスの紡績絹糸で、肌触りや見た目の質感なども両者の中間程度の特徴を持ちます。幅広いアイテム作りに使用できる絹糸です。 |
シルクの主な特徴
手触りが良く、古くから人々に親しまれてきたシルク生地は、肌に触れるアイテムのハンドメイド素材にも適しています。多くの人気を集め、さまざまなアイテムに使用されるシルクには、どのような魅力があるのでしょうか。
シルク全体に共通する特徴としては、次の4つが挙げられます。
シルクの主な特徴
- 上品な光沢がある
- 肌に優しい
- 紫外線をカットする
- 静電気を防ぐ
シルクの糸には、真珠のような上品な光沢があり、衣服などに高級感を演出してくれる点が特徴です。特に、生糸は絹紡糸や絹紬糸と比べて、より輝くような光沢感を持ちます。パジャマやインナー類といった普段着に加え、有名ブランドの洋服やウエディングドレスの生地にも使用されるシルクは、ワンランク上のアイテム作りにぴったりの素材です。
また、シルクの生地は通気性が良く、吸放湿性ともにコットンの約1.5倍と言われており、肌が蒸れやすい夏場に重宝する生地です。加えてシルク繊維は、人の肌に近い構造を持った「フィブロイン」や「セリシン」などのタンパク質からできており、刺激が少なく高い保湿性を備えています。乾燥が気になる冬場でも素肌を優しく包みこむなど、優れた機能性を持ち、季節を問わず快適に着用できます。敏感肌の方でも安心して使用できる点も大きな魅力です。
さらに、蚕は紫外線により成長が妨げられる性質があるため、蚕を守る繭には紫外線を吸収する性質があります。繭から得られるシルクの紫外線カット率は約90%に上ると言われています。また、化学繊維製品よりも乾燥しにくいシルク製品は、静電気が起きづらい点もメリットです。
見た目の美しさだけではなく、肌や身体に優しい特徴を持つことも、シルクがあらゆる場面で重宝される理由かもしれません。
洗濯時の注意点は?
素肌に優しく使い心地が良いなど、多くの魅力が詰まったシルクですが、とても繊細な素材であるため、洗濯方法には注意が必要です。お湯を張った洗面器で「手洗い」することを基本とし、以下の4つのポイントに気をつけましょう。
- 20℃程度のぬるま湯を使う
- おしゃれ着用中性洗剤を使う(必ず洗濯表示を確認)
- 摩擦が起きないよう、優しく押し洗いをする
- 脱水時は強く絞らず、大きなタオルなどで水を吸い取る
なお、「洗濯可能」の表示がついている場合は、洗濯機が使用できます。洗濯機を使う場合に注意するポイントは、以下の4点です。
- 必ず目の細かいネットに入れて洗う
- おしゃれ着用中性洗剤を使う(必ず洗濯表示を確認)
- 表示の液温にて、ドライコースやおしゃれ着コースなど、水流が弱いコースで洗う
- 脱水は15〜30秒程度の短時間で済ませる
シルクの歴史
シルクは身の回りの幅広いアイテムに用いられ、日本文化に根付いた素材と言えますが、誕生から現代までにどのような歴史を辿ってきたのでしょうか。
素材用などのために蚕を育て、繭を得る「養蚕」は、約5,000年前の中国で始まったそうです。シルクは中国宮廷の宝として秘密にされていたため、中近東やローマには養蚕が始まってから約3,000年後に伝わり、シルクロードと呼ばれる東西の交易ルートが開かれたと言われています。
日本には紀元前200年頃に養蚕技術が伝えられました。その後、江戸時代には京都の「西陣織」や山形の「米沢織」などの織物が生み出され、日本独自の文化発展とともに、素材としてのシルクが広まることになります。近代になると、国内需要の高まりに伴い「富岡製糸場」に象徴される製糸技術の機械化が進み、シルク産業は戦後経済の一端を担う存在になりました。
シルクは、日本独自の織物文化と技術の発展とともに少しずつ人々の生活に馴染み、幅広いアイテムに使われる身近な素材になったことが分かります。
まとめ
日本でも古くから親しまれてきたシルクには、見た目の美しさだけではなく、肌や身体に優しいといった機能面での魅力もあります。しかし、とても繊細な素材であるため、洗濯などのお手入れ時には摩擦や洗剤で生地が傷まないよう注意しましょう。
また、シルクには蚕の飼育方法や製糸方法の違いにより、複数の種類が存在します。ハンドメイドなどでシルク生地を扱う際は、紹介した内容を参考に、シルクの細かい種類ごとの特徴を踏まえて選ぶことも大切です。